ベトナム不動産のピンクブック(権利証)|発行遅延リスクと対処法

ピンクブックは、ベトナムで住宅所有権と土地使用権を証明する公的書類で、日本の登記簿に相当します。これがなければ正式な売却・担保設定・相続ができないため、ベトナム不動産投資で最も重要な書類の一つです。しかし外国人向けの発行は1〜2年以上かかるケースが多く、プロジェクトによっては数年待たされることもあります。本記事では、ピンクブックの仕組み、発行までの流れと期間、遅延の原因、発行されない場合のリスク、購入前のチェックポイント、遅延時の対処法までを解説します。
- Qピンクブックとは何ですか?Aベトナムにおける住宅所有権と土地使用権を証明する公的書類で、日本の登記簿に相当します。正式名称は「土地使用権・土地付帯資産所有権証明書」で、表紙がピンク色であることからピンクブックと呼ばれています。
- Qベトナムのレッドブックとピンクブックの違いは何ですか?Aレッドブック(赤い表紙)は歴史的に土地のみの使用権証書、ピンクブック(ピンクの表紙)は住宅の所有権と土地使用権の両方を証明する書類でした。2024年土地法の施行(2024年8月1日)により両者は一つの証明書に統一されましたが、実務では今も区別して呼ばれています。
- Qピンクブックの発行にはどのくらい時間がかかりますか?Aデベロッパーは引き渡し後50日以内に申請する義務があり、行政処理は通常2〜6か月です。ただし外国人向けは実際には1〜2年以上かかるケースが多く、プロジェクトによっては数年以上待たされることもあります。
- Qピンクブックがないと物件は売却できませんか?A正式な売却手続きにはピンクブックが必要です。未発行の状態では、デベロッパー発行の売買契約書をベースにした権利譲渡という形での取引が可能な場合もありますが、法的リスクが高く、買い手も限定され、価格も割安になりがちです。
- Qピンクブックの発行が遅延した場合、どこに相談すればいいですか?Aまずデベロッパーに書面で催促し進捗を確認します。解決しない場合は現地の弁護士への相談、人民委員会への申立て、損害賠償請求の検討という順で対応します。日本人投資家は在ベトナム日本大使館・総領事館にも相談できます。
「物件は引き渡されたのに、権利証がいつまでも届かない」——ベトナム不動産では、ピンクブック(権利証)の発行が大幅に遅れるトラブルが実際に起きています。ピンクブックがなければ、その物件を正式に売却したり、担保に入れたり、相続したりすることができません。
本記事では、ベトナム不動産のピンクブック(権利証)とは何か、発行までの流れと期間、なぜ発行が遅れるのか、発行されない場合のリスク、そして購入前のチェックポイントと遅延時の対処法までを、投資家が権利証まわりのトラブルを避けられるよう解説します。
ピンクブックとは|ベトナム不動産の「権利証」を理解する
ピンクブックは住宅所有権と土地使用権を証明するベトナムの公的書類で、日本の登記簿に相当し、これがなければ正式な売却・担保設定・相続ができません。 ベトナム不動産投資においてピンクブックは最も重要な書類の一つであり、ピンクブックを取得できるかどうかが投資の安全性を大きく左右します。まずはピンクブックの仕組みを正しく理解しましょう。
ピンクブックの正式名称と法的位置づけ
ピンクブック(sổ hồng)の正式名称は「土地使用権・土地付帯資産所有権証明書」で、表紙がピンク色であることから通称ピンクブックと呼ばれています。 ピンクブックには、所有者情報、土地区画の詳細(住所・面積・使用目的・使用期間)、建物情報、境界線図、変更履歴などが記載され、ベトナムにおける不動産の所有権を公的に証明する役割を果たします。
ベトナムの不動産取引では、日本のように決済当日に司法書士が所有権移転登記を同時に行う仕組みはありません。決済後に公証役場で書類の認証を受けたうえで、ピンクブックの発行はデベロッパーを経由して別途申請する流れになります。ピンクブックが手元に届いて初めて、その物件の正式な所有者として公的に認められることになります。
レッドブック(土地使用権)とピンクブック(住宅所有権)の違い
レッドブック(sổ đỏ)は歴史的に土地のみの使用権を証明する赤い表紙の証書、ピンクブックは建物を含む土地付き資産の所有権を証明するピンクの表紙の書類として区別されてきました。 コンドミニアムや戸建て住宅の取引で投資家が受け取るのは、住宅所有権を含むピンクブックです。
ただし、2024年土地法(Law No. 31/2024/QH15)の施行により、2024年8月1日からレッドブックとピンクブックは「土地使用権・土地付帯資産所有権証明書」という一つの証明書に統一されました。新様式(通達10/2024/TT-BTNMT)はQRコードが統合され、従来の4ページから2ページに簡素化されています。ただし旧様式の用紙の在庫使用が2024年12月31日まで認められたため、新様式での交付が本格化したのは2025年1月以降です。なお、すでに発行されている旧証明書もそのまま有効で、新様式へ交換する必要はありません(土地法2024 第256条3項)。証明書が統一された後も、実務上は分譲マンションの権利証を「ピンクブック」、土地の権利証を「レッドブック」と呼び分ける慣習が続いています。
外国人に発行されるピンクブックの特徴(50年の期限付き)
外国人個人に発行されるピンクブックには、土地そのものの所有権ではなく、住宅の概要と敷地の土地使用権の一部が記載され、所有期間は発行日から最大50年の期限付きとなります。 ベトナムでは土地は国家が管理し、外国人は土地そのものを所有できないため、ピンクブックの記載内容もベトナム人とは異なります。
外国人のピンクブックの所有期間は、発行日から最大50年で、満了前に1回限り50年の延長を申請でき、合計で最長100年まで所有できます。所有期間や外国人の購入条件の詳細はベトナム不動産の所有期間、外国人がベトナム不動産を購入できる条件で解説しています。なお、コンドテルなどの非居住用物件、政府からデベロッパーへのリース土地上の物件、外国人投資が開放されていない物件、国防・安全保障上の制限区域内の物件などは、そもそもピンクブックを取得できない場合があるため注意が必要です。
ピンクブック発行までの流れと期間
ピンクブックの発行は、法定ではデベロッパーが引き渡し後50日以内に申請し行政処理は通常2〜6か月ですが、外国人向けは実際に1〜2年以上かかるケースが多く、プロジェクトによっては数年待たされることもあります。 法律上の期間と実際にかかる期間には大きな乖離があるため、購入計画にはピンクブックが届くまでの待ち時間を織り込んでおく必要があります。
ピンクブック発行までのステップ
ピンクブックが発行されるまでの流れは、おおむね次のように進みます。
- 物件の引き渡しと残金の支払い
- デベロッパーによる登記申請書類の準備・提出(引き渡し後50日以内が義務)
- 登記税(物件価格の0.5%)など税金の支払い
- 行政機関による書類審査(通常2〜6か月)
- ピンクブックの発行・受領
2023年住宅法により、デベロッパーは物件の引き渡し後50日以内にピンクブックの申請書類を提出する義務を負っています。また、不動産事業法では、ピンクブック発行前にデベロッパーが受領できる売買代金は最大95%までと定められており、残りの5%以上はピンクブック発行後に支払う仕組みになっています。残代金を最後まで支払わないことが、購入者にとってピンクブック発行を促す一つの手段になります。
登記税は物件価格に対して0.5%が課されます。たとえば物件価格が4,000万円であれば、登記税は次のように計算できます。
物件価格が4,000万円の場合、登記税は20万円となります。ピンクブック取得時にはこの登記税に加えて公証費用などもかかり、購入時の諸費用は総額で物件価格の13〜18%程度を見込んでおくとよいでしょう。税金や諸費用の詳細はベトナム不動産投資の税金もあわせてご覧ください。
法定期間と実態の乖離
法定の処理期間は数か月ですが、外国人向けピンクブックの発行実態は1〜2年以上かかるケースが多く、好事例と遅延事例の差が非常に大きいのが現状です。 期間の目安を整理すると次の通りです。
| 項目 | 期間・水準 |
|---|---|
| デベロッパーの申請義務期限 | 引き渡し後50日以内 |
| 行政処理期間(通常) | 2〜6か月 |
| 外国人向け発行期間(実態) | 1〜2年以上 |
| 好事例(VIN CITY/Vingroup) | 申請後 約6か月 |
| 発行前に支払える代金の上限 | 売買代金の95% |
大手デベロッパーのVingroupが手がけたVIN CITYの事例では、引き渡し後30日以内に申請し、約6か月でピンクブックが発行されました。一方で、外国人向けの発行事例が少なく役所の手続きが煩雑なことから、1〜2年以上待たされるケースが少なくありません。少しでも書類に不備があると交付されない可能性があるため、どのデベロッパーのどのプロジェクトを選ぶかが、ピンクブック取得の早さを大きく左右します。
なぜピンクブックの発行が遅れるのか|3つの原因
ピンクブック発行遅延の最も多い原因はデベロッパー側の書類不備や手続き遅延で、次いで行政手続きの遅延、土地使用料・許認可の問題が続きます。 発行遅延の多くは購入者個人では解決できない構造的な問題であるため、原因を理解したうえで、遅延リスクの低いプロジェクトを選ぶことが重要です。
原因1:デベロッパー側の書類不備・手続き遅延
ピンクブック発行が遅れる最多の原因は、デベロッパー側の法的書類の未整備や申請の遅れです。 デベロッパーに起因する遅延には、法的書類が完了せず当局へ申請できない、承認された図面や建設許可と異なる施工をしてしまった、プロジェクト変更で追加の財務義務が生じた、書類を提出しない・提出が遅い、といった類型があります。
さらに、デベロッパーが訴訟に巻き込まれた場合には、ピンクブックの発行自体が停止される事例も確認されています。デベロッパーの信頼性が、そのままピンクブック発行の確実性につながるといえます。
原因2:行政手続きの遅延と人員不足
地方政府の処理能力の限界や申請の優先順位づけにより、行政側でピンクブックの審査・発行が滞ることがあります。 ホーチミン市の当局は、税務の確認待ち、デベロッパーの書類提出遅延、新規不動産プロジェクト、追加の財政義務が必要なプロジェクト、検査・調査中のプロジェクトなどを、発行が遅れるカテゴリーとして挙げています。
外国人向けの発行は、発行実績そのものが少なく役所の手続きが煩雑なため、ベトナム人向けよりも時間がかかる傾向があります。都市による差もあり、一般にハノイのほうがホーチミン市よりも外国人向けピンクブックの発行が進んでいるとされています。
原因3:土地使用料・プロジェクト許認可の問題
デベロッパーによる土地使用料の未納や金額の未確定は、ピンクブックの発行を直接妨げる要因になります。 土地使用料が確定しなければ、行政はピンクブックを発行できません。ホーチミン市では、土地使用料の問題によって発行できない物件が14プロジェクト・6,130戸にのぼると報告されています。
ホーチミン市全体では、2024年時点で335プロジェクト・8万1,000戸超のピンクブックが未発行とされ、そのうち発行要件を満たさない物件が1万7,500戸に達するという報告もあります。古い事例では、2001年に完成しながら20年以上が経過してもピンクブックが発行されていないマンションも存在します。土地の法的問題やプロジェクト自体の許認可不備は、購入者にはコントロールできない深刻な遅延要因です。
ピンクブックが発行されないとどうなる?|4つのリスク
ピンクブックがなければ物件の正式な所有者として認められず、売却・担保・相続のすべてに支障が出て、物件価値が大きく下落するリスクがあります。 ピンクブックが発行されない、あるいは大幅に遅れることは、単なる手続きの遅れではなく、投資の安全性そのものを脅かす問題です。具体的な4つのリスクを確認しましょう。
リスク1:正式な売却ができない
ピンクブックがなければ正式な所有権移転の手続きができないため、物件を売却したくても買い手が見つかりにくくなります。 多くの買い手は、権利関係が確定していない物件の法的リスクを嫌うためです。
ピンクブック未発行の段階でも、デベロッパー発行の売買契約書をベースにした権利譲渡という形での取引が可能な場合はありますが、プロジェクトによってはピンクブックの発行が転売の条件とされていることもあります。出口戦略の自由度が大きく下がる点に注意が必要です。
リスク2:銀行の担保として使えない
ピンクブックがなければ、その物件を担保にして金融機関から融資を受けることができません。 不動産を担保とした資金調達や借り換えを想定している場合、ピンクブックの未発行は大きな制約になります。
ベトナムの不動産は、ピンクブックという公的な所有権証明があって初めて担保としての価値が認められます。権利証がない状態では、物件を保有していても金融取引の場面で活用できないことになります。
リスク3:相続手続きが極めて複雑になる
ピンクブックがない物件は、所有者に万一のことがあった場合の相続手続きが極めて複雑になります。 相続では所有権を公的に証明する書類が不可欠であり、ピンクブックがなければ相続人が正式な権利を引き継ぐことが難しくなります。
海外資産の相続は手続きが煩雑になりやすく、権利証がないことでさらに困難が増します。長期保有や次世代への承継を考える場合は、ピンクブックの取得可否を購入前に必ず確認しておくことが重要です。
リスク4:物件価値の下落
ピンクブックがない物件は市場で敬遠されるため、価格が大きく下落し、最悪のケースでは同条件の権利証あり物件の半値程度になることもあります。 権利証がない物件は法的リスクを抱えているとみなされ、買い手が大幅な値引きを求めるためです。
ベトナムでは、ピンクブックがない物件を購入することで約10億ドン(約600万円)の節約になる場合があるものの、専門家はそのリスクが節約額を上回ると警告しています。目先の割安感に惹かれてピンクブックなしの物件を選ぶと、売却時に大きな損失を被るおそれがあります。こうした失敗を避ける考え方はベトナム不動産投資の失敗事例でも解説しています。
購入前に確認すべき4つのチェックポイント
デベロッパーの過去のピンクブック発行実績、プロジェクトの許認可、契約書のピンクブック発行条項、発行済みの中古物件という選択肢の4点が、発行遅延リスクを見極めるための主な確認事項です。 ピンクブックの発行遅延は構造的な問題が多いものの、購入前の確認によってリスクの高い物件を避けることは可能です。
チェック1:デベロッパーの過去のピンクブック発行実績
最も重要なのは、そのデベロッパーが過去のプロジェクトでピンクブックを予定通り発行してきた実績があるかを確認することです。 過去のプロジェクトで滞りなくピンクブックを発行してきたデベロッパーであれば、新規プロジェクトでも発行される可能性が高いと考えられます。
逆に、過去に発行遅延やトラブルを起こしているデベロッパーの物件は、同じ問題を繰り返すリスクがあります。デベロッパーの完工実績と発行実績は、価格や立地と同じくらい重視すべき判断材料です。デベロッパーの信頼性確認は、完成前に購入するプレビルド投資全体のリスク管理にも通じます。詳しくはベトナム不動産プレビルド投資のリスクで解説しています。
チェック2:プロジェクトの許認可・建設許可の確認
建設許可(Giấy phép xây dựng)や設計承認など、プロジェクトの許認可が適切に取得されているかを確認することが重要です。 許認可に不備があるプロジェクトは、そもそもピンクブックの発行要件を満たせない可能性があります。
許認可の確認は専門的な内容を含むため、ベトナムの弁護士に依頼して、プロジェクトの法的状態を調査してもらうことをおすすめします。土地使用料が納付済みか、土地の法的問題がないかも、あわせて確認したいポイントです。
チェック3:契約書のピンクブック発行条項
売買契約書に、ピンクブックの発行期限、遅延した場合の違約金、発行できなかった場合の返金条件が明記されているかを確認しましょう。 契約書に発行条項が盛り込まれていれば、万一遅延した場合の交渉や法的手段の根拠になります。
あわせて、外国人購入枠(コンドミニアムは1棟あたり総戸数の30%が上限)に空きがあり、自分の名義でピンクブックが発行できる状態かも、デベロッパーから書面で確認しておくことが重要です。外国人枠の確認方法は外国人購入枠30%の確認方法と枠切れ対策で詳しく解説しています。
チェック4:ピンクブック発行済みの中古物件を選ぶ
発行遅延のリスクを根本から避けたい場合は、すでにピンクブックが発行済みの中古物件を選ぶという選択肢があります。 外国人が所有していた物件であれば外国人どうしの売買が認められており、ピンクブックが発行済みであれば発行を待つリスクはありません。
ただし中古物件の場合、所有期間は前所有者の残存期間を引き継ぐため、残り何年の権利があるかを必ず確認する必要があります。発行待ちのリスクと残存期間のバランスを見て、自分の投資方針に合った選択をしましょう。
ピンクブック発行が遅れた場合の対処法
ピンクブックの発行が遅れた場合は、デベロッパーへの書面での催促を起点に、現地弁護士への相談、人民委員会への申立て、損害賠償請求の検討という順で対応し、日本人投資家は在ベトナム日本大使館・総領事館も相談先として活用できます。 段階を踏んで冷静に対応することが、解決への近道です。
対処法1:デベロッパーへの書面での催促と進捗確認
まずはデベロッパーに対して、書面でピンクブックの発行状況と見通しを確認し、催促することが基本です。 口頭ではなく書面でやり取りを残しておくことが、後の交渉や法的手段の証拠になります。
ベトナムには、ピンクブックの申請が遅れたデベロッパーに対する罰金制度があります。遅延の期間が長くなるほど罰金額も大きくなる仕組みで、書面での催促はこうした制度を背景にした正当な働きかけになります。
| 申請遅延の期間 | デベロッパーへの罰金額 |
|---|---|
| 50日〜6か月 | 1,000万〜5,000万ドン |
| 6か月〜12か月 | 3,000万〜5億ドン |
| 12か月以上(100戸以上が対象) | 最大10億ドン |
罰金額は遅延期間と対象戸数に応じて重くなります。デベロッパーにとっても発行遅延は罰金リスクを伴うため、書面での催促は一定の効果が期待できます。
対処法2:現地弁護士への相談と法的手段の検討
デベロッパーへの催促で解決しない場合は、ベトナムの弁護士に相談し、売買契約に基づく違約金請求や損害賠償請求などの法的手段を検討します。 契約書にピンクブック発行条項が明記されていれば、法的手段の有力な根拠になります。
法的手段は専門的な判断を要するため、ベトナム不動産の案件に実績のある弁護士に相談することが重要です。なお、運営元の株式会社DeLTは宅地建物取引業の免許を持たず、物件の仲介・媒介や法務対応は行わない情報提供のメディアです。本記事は対処の流れを知るための一般情報の提供を目的としています。
対処法3:行政機関への申立て
行政側の遅延が原因の場合は、建設管理機関や人民委員会(UBND)への苦情申立て、回答期限を過ぎた場合の行政不服申立てや提訴という手段があります。 行政手続きの遅延に対しては、正規の申立てルートを通じて改善を求めることができます。
近年は行政側でも改善の動きが見られます。ホーチミン市は2024年10月に発行促進のためのタスクフォースを設立し、未発行案件の見直しと加速を進めており、2025年には3万8,000戸のピンクブック発行完了を目標に掲げています。2024年1〜2月の発行数が前年同期比で大きく増加するなど、改善傾向もみられます。
対処法4:在ベトナム日本大使館・総領事館への相談
日本人投資家の場合は、在ベトナム日本大使館・総領事館も相談先として活用できます。 公的機関への相談は、トラブルの状況整理や次の対応を検討するうえで役立ちます。
大使館・総領事館が個別のトラブルを直接解決してくれるわけではありませんが、相談先の一つとして知っておくことで、いざというときの選択肢が広がります。最終的な権利の確保には、現地の弁護士など専門家の関与が欠かせません。
ピンクブックなしで取引する場合の注意点
ピンクブック未発行でも売買契約書(SPA)をベースに取引されるケースはありますが、法的リスクが高く、価格が割安になりやすいため、検討する場合は最低限の確認を徹底する必要があります。 実務上、ピンクブック発行前の物件が取引されること自体はめずらしくありませんが、リスクを正しく理解したうえで判断することが重要です。
デベロッパー発行の売買契約書(SPA)による取引
ピンクブック発行前は、売買契約書(SPA)が一時的な所有権の証明として機能します。 中古不動産の売買がピンクブック発行前に行われることは標準的で、取引はデベロッパーの関与のもと、公証人の面前での契約署名によって進められ、デベロッパーが名義変更完了の通知を発行します。
ただし、売買契約書には物件の欠陥・完成保証・遅延補償に関する買い手保護の条項が曖昧、または欠落している場合が多くあります。公証を経ていない、立会人付きの書類への署名だけでは、法的な安全性としては不十分です。
法的リスクと価格への影響
ピンクブックなしの物件は、売主による取り戻し請求や係争中物件であるリスクがあり、価格も同等物件より割安になりがちで、最悪の場合は半値程度になることもあります。 権利関係が確定していないことが、価格と安全性の両面に影響します。
ピンクブックがない物件を購入すると、知らないうちに係争中の物件を取得してしまったり、売買契約自体が無効になったりするリスクがあります。発行承認後に証明書が取り消された事例も報告されており、ピンクブックがあれば絶対に安全というわけではありませんが、権利証がない状態のリスクはそれ以上に大きいといえます。
ピンクブックなし物件を検討する場合の最低限の確認事項
やむを得ずピンクブックなしの物件を検討する場合は、ピンクブックが将来発行される見込みがあるか、係争や差し押さえがないか、転売が可能かを最低限確認しましょう。 これらは購入者自身では判断が難しいため、専門家の確認が欠かせません。
とくに、ベトナム人がデベロッパーを介さず外国人に直接転売したような物件では、ピンクブックの申請がベトナム人名義のまま提出されてしまうトラブルも報告されています。ピンクブックなしの物件は、目先の割安感だけで判断せず、ベトナムの弁護士による事前確認を必ず行うことが重要です。
免責事項
本記事は2026年6月時点の情報をもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の投資の勧誘や、法務・税務上の助言を行うものではありません。ベトナムの法令・制度・税制は改正される場合があり、実際の適用は個別の状況によって異なります。ピンクブックの発行可否や物件の権利関係、契約条件は必ずデベロッパー発行の書面で確認し、購入や対処の最終的な判断にあたっては、ベトナムの弁護士・税理士など専門家にご相談ください。なお、運営元の株式会社DeLTは宅地建物取引業の免許を有しておらず、物件の仲介・媒介は行わず、情報提供を目的としています。
参考文献
本記事の執筆にあたり、以下の情報源を参照しました。
- Vietnam.vn — 引き渡し後50日以内のピンクブック申請義務 — デベロッパーの申請義務・遅延類型の解説(政府系ポータル)
- SGGP English — ホーチミン市のピンクブック発行状況 — 未発行戸数・行政側の遅延カテゴリーの報道(政府系メディア)
- SGGP English — 土地使用料の停滞による発行不能 — 土地使用料問題による発行不能の報道(政府系メディア)
- Vietnam News — ホーチミン市の未発行ピンクブックの内訳 — 未発行戸数の分類データ(国営通信社)
- Thư viện pháp luật — 2025年からの証明書の正式名称 — 2024年土地法による証明書統一の解説(法令データベース)
- Luật Việt Nam — ピンクブック遅延時の法的対応 — 遅延時の苦情申立て・違約金・罰金制度の解説(法律解説)
- i-glocal — 不動産取引の支払いルール — ピンクブック発行前の支払い上限95%の解説(会計・法務事務所)
- Viet Tonkin Consulting — ベトナム不動産購入ガイド — 発行プロセス・諸費用の解説(法律事務所)
- Bamboo Routes — 外国人のピンクブック取得方法 — 外国人の発行手続き・書面確認の重要性の解説(外国人向け不動産ガイド)
- Homebase Vietnam — ベトナムの権利証と所有権ガイド — ピンクブックなしのリスク・都市差の解説(現地不動産テック)
- 明倫国際法律事務所 — レッドブックとピンクブックの違い — 両証書の区別の解説(法律事務所)
- VnExpress — ピンクブックなし物件の購入是非 — 割安物件のリスクに関する現地報道(現地メディア)
- access-online.net — ベトナム不動産の権利証実務 — 日本との手続きの違い・中古取引の実務解説(実務家コラム)
ご注意(免責)
- 本記事はベトナム不動産に関する一般的な情報提供を目的とするもので、投資助言・税務助言ではなく、投資勧誘でもありません。
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